恐れのない組織

 

久々に学びの多い本だった。

p24 私たちが見出した五つの成功因子のうち、心理的安全性の重要性は群を抜いている。それは他の四つの土台なのだ。ジュリア・ロゾフスキ「グーグルで有能なチームになるための五つのカギ」

p30 対人関係のリスクを取っても安全だと信じられる職場環境であること。それが心理的安全性だと、私は考えている。意義ある考えや疑問や懸念に関して率直に話しても大丈夫だと思える経験と言ってもいい。心理的安全性は、職場の仲間が互いに信頼・尊敬し合い、率直に話が出来ると(義務からだとしても)思える場合に存在するのである。

p38 だがそれ以上に悪いのは、不安にはやる気を引き出す力があると、多くのマネジャーがー意識的にも無意識的にもー相変わらず信じていることだ。(経営陣あるいは成績不振の結果を)恐れさせれば、人は望ましくない事態を避けるために熱心に仕事をするようになる。ひいては会社の業績も上がる、と信じ込んでいるのである。

p44 表1.1 心理的安全性と業績基準の関連性

           業績基準が低い     業績基準が高い

心理的安全性が高い  快適ゾーン       学習及び高パフォーマンス・ゾーン

心理的安全性が低い  無気力ゾーン      不安ゾーン

p47 表1.2 心理的安全性に関する意識調査

1.このチームでミスをしたら、きまって咎められる。

2.このチームでは、メンバーが困難や難題を提起することができる。

3.このチームの人々は、他と違っていることを認めない。

4.このチームでは、安心してリスクをとることができる。

5.このチームのメンバーには支援を求めにくい。

6.このチームには、私の努力を踏みにじるような行動を故意にする人は誰もいない。

7.このチームのメンバーと仕事をする時には、私ならではのスキルと能力が高く評価され、活用されている。

p51 CEOとして最も恐れるのは今、本当は何が起きているかが分からないことだ。(マーク・コスタCEO/イーストマン・ケミカル)

p70 ジュリア・ロゾフスキ率いる研究者たちは全社の180のチームについて分析し、メンバーの学歴、趣味、友人関係、性格的特性などを詳しく検討した。だが、何も発見できなかった。性格特性、スキル、経歴どれと考え合わせても、チームのパフォーマンスとの関連の説明がつかない。なぜ成功するチームと失敗するチームがあるのかという疑問には、答えがないかのようだった。ところがその後、デュヒッグが書いているように、「ロゾフスキとグーグルの仲間たちは、学術論文の中で、心理的安全性という考えに出会った。その時突然、全てのつじつまが合ったように思われた」。グーグルのずば抜けて優秀で有能な社員でさえ、持てる力を確かに役立てるには心理的に安全な環境が必要であることを、彼らは突きとめた。また、ほかにも四つの要因ー明確な目標、頼れる仲間、個人的に意味のある仕事、その仕事に影響力があるという信念ーが、チームのパフォーマンスに影響することを見出した。しかしながら、ロゾフスキが述べたように、また、第一章の冒頭で引用した通り、「心理的安全性の重要性は、群を抜いている。・・・それは、他の四つの土台なのだ」

p71「満足」とは、従業員が楽しんでいる、あるいは不足を感じていないという意味であり、仕事への感情的コミットメント、つまり、いい仕事をすることに全力投球する意欲を表していない。一方、仕事への情熱と組織へのコミットメントの程度と定義される「エンゲージメント」は、自発的に仕事に取り組む熱心さの指標と考えられる。

p143 「PRINCIPLES人生と仕事の原則」レイ・ダリオ

p145 「現代社会の失敗恐怖症は深刻だ」レイ・ダリオ

p154 

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p157 「本当の失敗は、やってみてうまくいかないとわかったのに、なおも続けていくこと」アストロ・テラー

p164 恐れるべきは、死ではない。充実した生き方ができていないことをこそ、恐れるべきなのだーマルクス・アウレリウス

p212 ワールドカフェ 

ja.wikipedia.org

p246 ちょっと意外な、シンプルで効果抜群のフレーズをいくつか紹介しよう。心理的な安心感をほんの少し高めるために、誰もが使えるフレーズである。

わかりません。手助けが必要です。間違ってしまいました。申し訳ありません。

p253 かのヘンリー・フォードは、次のように不平を漏らしていたという。「私は人手が欲しいと言っているのに、なぜいちいち脳みそをくっつけてやってくるんだ?」

p257 調査によれば「パワー・ディスタンス」が大きい国は他国に比べて心理的安全性が低いという。Anicich, E.M., Swaab, R.I., & Galinsky, A.D. "Hierarchical Cultural Values Predict Success and Morality in High-Stakes Teams." Proceedings of the National Academy of Science 112.5 (2015): 1338-43

p270 具体的に、「信頼」と「心理的安全性」の違いとは何か。エドモンソン教授によると、「信頼」は個人が特定の対象者に抱く認知的・感情的態度であり、「心理的安全性」とは集団の大多数が共有すると生まれる職場に対する態度だ。

p272 イスラエルの研究者・カストロ氏が率いる研究チームは、心理的安全性に対する上司の傾聴行動を影響を検証した。この研究の重要な点は、高等なファシリテーション技術を用いずとも、「単純に耳を傾ける」という行為が心理的安全性を促進させることを発見したことだ。Castro, D. R., Anseel, F., Kluger, A. N., Lloyd, K. J., & Turjeman-Levi, Y.(2018) Mere listening effect on creativity and the mediating role of psychological safety. Psychologiy of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 12(4), 489-502