イスラームとは何か

イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化 (講談社現代新書)

イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化 (講談社現代新書)

20年前に書かれたものであるが、イスラームの概要を知るには十分な内容であった。
ムハンマドのマディーナでの建国・統治の経緯から、法学が尊ばれ政教一元となった
ところは今更ながら改めて理解した。

P.52 クルアーンの言葉のパワー。
   〜詩的で美しい。その美しさから入信する者も多かった。クルアーンはそもそも文字では
    なく音で読むもの。ムハンマドも文盲であった。

P.64 二つの原理―「アッラーのほかに神なし」「ムハンマドは神の使者なり」
   〜ユダヤ教キリスト教徒も神は共通であり、ムハンマドは最後で最高の預言者である。

P.68 セム的な中東の風土では、第一原理の「アッラーのほかに神なし」は争点ではない。問題
   は第二原理の「ムハンマドは神の使徒」である。これを認めなければ、人はセム的一神教
   のどれかの信徒であっても、イスラームには加わらない。「モーセは神の使徒」であるが、
   イエスムハンマドを認めないのであれば、ユダヤ教徒であり、モーセもイエスも認める
   がムハンマドを否定すればキリスト教徒、ということになる。

P.106 戦役の続いたマディーナ社会のように、社会的理由で男女バランスが崩れることが
   ある。一夫一婦では解決できない問題がある場合に、多妻という解決策が認められる。
    だが、公正にしてやれそうにないなら、ただ一人だけ〔娶るがよい〕
   〜一夫一婦が常態であり、一夫多妻は寡婦を経済的に支援するための合理的社会制度と
    理解される。

P.283 ムスリムに言わせると、ユダヤ教徒が自分たちだけがセム的一神教と思っていることが、
   混乱の元である。彼らは言う―そもそも、われわれはパレスチナユダヤ教徒から奪った
   わけではない。イスラーム軍が七世紀に占領した時、そこはビザンチン領であった。
   さらに、当時はキリスト教ユダヤ教を嫌っているがゆえに、ユダヤ教徒パレスチナ
   入ることが許されなかった。七世紀以降、ユダヤ教徒が聖地に行けるようになったのは
   イスラームのお陰ではないか。イスラームは十三世紀の間、共通の聖地としてパレスチナ
   やエルサレムを尊び、その宗教的価値を高めてきた。